世界気管支拡張症デー(7月1日)に寄せて
7月1日は「世界気管支拡張症デー(World Bronchiectasis Day)」です。この日は、気管支拡張症の啓発と患者支援の重要性を国際社会と共有する機会として設けられました。
気管支拡張症は、気管支が不可逆的に拡張し、咳や痰が続く病気です。血痰や喀血がみられることもあります。進行すると呼吸機能が低下し、日常生活に支障をきたします。気管支拡張症の原因は多岐にわたり、肺炎や結核、非結核性抗酸菌症などの呼吸器感染症の合併症や後遺症として発症するほか、膠原病などの自己免疫疾患、先天性疾患などの関与が知られています。我が国では、高齢化社会の進展や非結核性抗酸菌症患者の増加に伴い、気管支拡張症の患者数が増加傾向にあり、世界的にも患者数の増加が報告されています。
気管支拡張症の早期診断や適切な管理が求められる一方、その認知度は低く、適切な診断や治療が遅れるケースも少なくありません。患者さんの生活の質(QOL)を向上させるためには、医療現場のみならず社会全体での取り組みが重要です。
気管支拡張症については、その病態の解明や新規治療法の開発に向け、国内外でさまざまな研究が行われています。気管支拡張症の疫学調査や遺伝子解析に加えて、新規治療薬の臨床試験も進行しています。
日本結核・非結核性抗酸菌症学会では、気管支拡張症の原因となる非結核性抗酸菌症の診療の手引きを作成するなど、医療従事者への周知を図るとともに、学会主催のセミナーやワークショップを通じて、最新の知見を共有しています。また本年6月7日には横浜市において市民公開講座「肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)と気管支拡張症」を開催するなど、一般の方々への啓発活動にも取り組んでいます。
世界気管支拡張症デーを機に、改めてこの疾患と向き合う必要性を認識していただければ幸いです。当学会は今後も、患者さん中心の医療を実現するため、研究・診療・啓発活動に尽力してまいります。皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。
日本結核・非結核性抗酸菌症学会
常務理事 田坂 定智