理事長の挨拶
日本結核・非結核性抗酸菌症学会 理事長 佐々木 結花
(独立行政法人国立病院機構東京病院呼吸器センター呼吸器内科)
2025年6月より、一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会(JSTB)理事長を拝命いたしました、独立行政法人国立病院機構東京病院の佐々木です。前任の礒部 威理事長のもと常務理事として学会運営に携わってまいりました。
礒部理事長は三つの目標、「生涯教育の提供」、「連携強化」、「研究強化」を挙げ、その実現に邁進されました。私もこれらの目標を継続して挙げさせていただくとともに、学会機能の強化、会員の皆様の学会アクセスの簡易化を図っていかねばならないと考えております。
10年ひと昔という言葉がはるかに遅く思える昨今、技術の進歩に応じ、環境に配慮した対応が学会に求められています。電話や紙ベースのやり取りを最小限とし、電子化・省力化すると同時に、学会の支出を抑えていくよう努めていかねばなりません。現在、医療をめぐる環境は厳しさを増しております。COVID-19パンデミックによって医療に対する考え方の変化や受療行動の変容、また本邦の経済状況の変化による診療報酬体系の変革は、医療機関存続の危機をもたらしております。その状況に応じて、本学会も社会保険委員会を通じて広く医療の変革に備えていかねばなりません。事実、各種学術集会の実施自体が危機にさらされており、主催する先生方との協議も今後開始されねばなりません。礒部前理事長が拓かれた合議による決定は、今後も維持できるよう継承してまいります。
本学会の柱は、結核および非結核性抗酸菌症であります。しかし、それだけを至上のものとしていては、人全体への対策・対応には不十分であることが明らかではないでしょうか。本学会では、柱となる結核および非結核性抗酸菌症とその周辺の疾患に係る研究を含め、本学会に人材を集め学際的な研究を行うために、従来にとらわれず合議によって対応していかねばならないと考えています。関連する学会に参加している先生方のご協力を仰ぎ、諸学会との協議・共同事業を広く行うとともに、本学会を主体とする研究への助成の在り方についても検討を行うべきであると考えています。基礎分野の研究者の先生方も臨床医の先生方も、そして行政の先生方も、医師という資格を問わず、広く本学会のために知を結集していただければと存じます。
ミッションといたしまして特に以下を挙げたいと思います。
1)国際的な変化に応じ、海外の医療レベルに応じ結核医療の質を向上させることに尽力すること。そのために学会横断的なワーキンググループを設けること。学会として学会員及び本邦への報告を定期的に行っていくこと。学会の取り組みが結核患者数減少に寄与していくこと。
2)非結核性抗酸菌症の患者数増加に伴い、非結核性抗酸菌症対策委員会において、国の疫学的情報収集に対応する疫学、診断技術、治療、非薬物的治療に対応可能な複数のワーキンググループを編成し、やがては現委員会の枠組みを超えた新しい枠組みを立ち上げていく準備を開始することを、非結核性抗酸菌症対策委員会と協議すること。
3)気管支拡張症に対するワーキンググループを立ち上げること。
4)慢性下気道感染症の後遺症と予後に関するワーキンググループの設立を準備すること。
5)新薬や医療新技術に関することだけではなく、保険医療における結核・非結核性抗酸菌症・周辺疾患に対する問題を解決すべく、社会保険委員会を強化すること。
本学会が社会の要請に応えていくためには、上記のみならずまだまだ多くのミッションが要求されていくものと思われます。学会役員だけでなく、学会員が一丸となって結核・非結核性抗酸菌症及びその周辺疾患の発展に寄与し、患者さんの毎日を明るくすることができますよう、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
常務理事
総務担当 露口 一成
本学会の総務を担当させていただくこととなりました。日本における結核の罹患率は10を切り低まん延国となったものの若年における外国人結核の増加、高齢者結核はなお大きな問題です。また増加し続ける非結核性抗酸菌症については診断、治療をはじめとして課題が山積みです。礒部前理事長の挙げられた三つの目標、佐々木理事長の挙げられた五つのミッションが今後の本学会の重要な任務となります。本学会が使命を果たせるよう、微力ながら佐々木理事長を支えて努力していきたいと考えておりますので、ご支援、ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
編集担当 田坂 定智
本学会の学会誌「結核」の編集を担当しております。「結核」は学会創設と同じ1923年(大正12)に発刊され、100有余年の歴史を誇る雑誌です。しかし、「結核」を取り巻く状況は厳しく、投稿論文数が減少しております。学会員の皆様におかれましては、支部学会で発表された症例報告などをご投稿いただければと思います。また「短報」や「活動報告」など多様なカテゴリーがありますので、日本語でないとニュアンスが伝わりにくい内容などを是非ご投稿ください。今後も誌面の充実に努めてまいりますので、ご支援、ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
将来計画担当 矢寺 和博
この度、将来計画委員会委員長を拝命いたしました。我が国では非結核性抗酸菌症の患者数が増加傾向であり、難治例も少なからずみられますが、診療のエビデンスは未だ不十分であり、重要な問題です。結核診療においても、外国生まれの結核患者の増加などに対する柔軟で効果的な対応が社会から求められ、結核診療における役割はさらに大きくなってきています。
本学会の社会的な使命としては、多くの内科、呼吸器内科、感染症科の医師、医療従事者、行政機関等のニーズに柔軟に対応し、効果的な情報発信や専門知識の啓発を通じてより魅力的な学会として社会に貢献するために、特に若手の会員数増加が重要課題と考えています。明確な長期ヴィジョンをもとに、伝統ある本学会の未来を明るいものとすべく、会員の皆様のご意見を頂戴しながら、学会の発展に尽力していく所存です。
何卒よろしくお願い申し上げます。
学会の概要と構成
- 団体の規模 2024年3月31日現在
- 団体の名称 一般社団法人 日本結核・非結核性抗酸菌症学会
- 設立 大正12年1月27日
- 組織図
(2023年6月9日)
- 会員数 3,781名
- 活動範囲 全国
- 2025役員名簿(2025年7月3日)
- 歴代の理事長・常務理事
- 事業内容
- 1. 学術総会,研究集会の開催
2. 学会誌,関連研究文書の刊行
3. 教育セミナーの開催
4. 若手医師・研修者・医療関係従事者の育成
5. 行政機関への勧告と提言
6. 内外の学術団体との交流
7. 学会賞の運営
8. 結核・抗酸菌症認定医・指導医認定制度の運営
9. ICD講習会の実施と申請 - 法的根拠 : 一般社団法人
- 学会の概要
- 設立:大正12年
結核が国民病と言われた時代,結核研究の進展と結核対策を目的として,北里柴三郎らによって設立された学会。 - 姿勢
長い歴史のなかで,日本の結核対策の推進や,結核患者の診療水準の向上に貢献し,その対策と研究に本学会が貫いてきた学問研修の推進,その成果を社会還元するという姿勢は,他の学問分野のモデルと言われている。 - 結核の状況
1990年代には,結核問題を軽視した結果,このまま消えていくと錯覚されていた結核が米国で反転上昇し,その対策と研究に多額の経費を使わざるを得なかった。
いまなお最大級の「再興感染症」として脚光を浴び,現在では,エイズ・マラリアと並んで世界の三大感染症の一つとして世界的に研究・対策の優先課題となっている。
- 設立:大正12年