会長挨拶
迎寛
第99回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会会長 
会 長   迎    寛
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学分野(第二内科)
 このたび、第99回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会会長を拝命いたしました長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科呼吸器内科学分野(第二内科)の迎でございます。今回の学会ポスターは出島を使わせていただきました。長崎は江戸時代に出島を通して海外の品物や情報に加え、海外からの輸入感染症がまず入ってきた所であり、そのために感染症を中心に西洋医学が発展してきた歴史があります。このような背景から感染症に対する意識が伝統的に高く、それが現在まで脈々と続いております。この西洋医学発祥の地、長崎で、伝統ある本学会の会長を務めさせていただくことを大変光栄に思っております。

 北里柴三郎博士が初代会長を務められた結核病学会(現:日本結核・非結核性抗酸菌症学会)は大変歴史ある学会ですので、その伝統を継承しつつ、学会の名称を新たにした様に、新しい時代に柔軟に対応していくことが私たち学会員の使命と考えています。そこで本学会のメインテーマを「抗酸菌感染症診療―伝統と革新の共存を目指して―」とさせていただきました。次の記念すべき第100回の学会につながるような学会にできればと思っております。

 超高齢社会の到来と免疫抑制療法の普及により、現在、私たちは日常診療の多くの場面において抗酸菌感染症を想定した診療を行うことが求められています。また、COVID-19の流行は多くの感染症診療の在り方を大きく変えてきましたが、感染症病床の逼迫などの課題に加え、受診控えによる診断の遅れを生み出すなど抗酸菌感染症もその例外ではありませんでした。さらに、近年は次世代シーケンサーの普及によって診断効率が格段に上がっており、遺伝子学的検査の普及は目覚ましいものがあります。この原稿を書いている時に厚生労働省からの報告がなされ、日本の2021年の結核罹患率(人口10万対)は9.2と初めて低蔓延国となりました。これは日本の歴史において画期的なことですが、COVID-19の流行により罹患率が一時的に下がっている可能性もあり、今後も注意していく必要があります。一方で、非結核性抗酸菌症は増加を認め日本の大きな問題になりつつあります。抗酸菌感染症は標準治療に難渋する症例も多く、新規治療法の開発が強く求められている分野とも言えるでしょう。

 本学会の大きな問題点の一つとして若手の先生方の参加が少ないことがあり、まず若い先生方に興味を持っていただくことが不可欠だと考えています。港町である長崎は、美味しい海の幸に溢れていますし、伝統的な町並み、観光名所に加え、新幹線開通や長崎駅周辺の開発等も進んでおりますので、是非若い先生方と一緒に足を運んでいただければと思います。かつて、シーボルトが開いた鳴滝塾のように、本学会を通して、新しい時代の抗酸菌感染症診療について先生方と大いに議論させていただければと思います。長崎の地で皆様を心よりお待ちしております。