会長挨拶

第90回日本結核病学会総会 大会長 河野 茂
(長崎大学理事・副学長)

 この度、第90回日本結核病学会総会の会長を仰せつかりました。北里柴三郎博士によって第1回大会が開催されて以来、大正・昭和・平成と時代と共に歩み、90回目の節目を迎えた本学会を、世界に一度も門戸を閉ざしたことのない長崎で開催できますことを大変光栄に存じます。

 1940年代のストレプトマイシンを皮切りに新規抗結核薬が次々と開発され、わが国の結核病に対する治療は大きく予後を改善しました。しかし結核はひととき国民病と呼ばれるなど、社会制度や風土の影響を受けやすく、結核を制圧するには疾病だけを向いていては困難であり、多角的・多様なアプローチが必要だという認識は近年ますます強くなっているように思います。さらに、結核患者を取りまく背景もめまぐるしく変化しており、急速に進行する高齢化、グローバル化による外国人結核の増加、HIV感染や糖尿病など合併症結核の増加、薬剤耐性結核の問題、生物学的製剤使用における潜在性結核への対応など、わが国の結核診療そのものも、様々な新しい問題点に直面しています。 もう一つ我々が制圧の目標に掲げたMycobacterium avium complex (MAC)症に代表される非結核性抗酸菌感染症の罹患率が右肩上がりに急増しています。こちらは要因すら判然とせず、いまだ決定的な治療法も存在しない難治性感染症であり、その対策は喫緊の課題です。

 このような背景から、本学会のテーマを「抗酸菌感染症の制圧を目指して、新たなステージへ」とさせて頂きました。様々な抗酸菌感染症に対する現在最先端の知見を集約・検討し、活発に討論した結果、未来に進むべき方向を臨むことができる高さの新しいステージまで一気に駆け上がることができればと考えています。研究から感染制御に至るまで、抗酸菌制圧に有効な「知」の形成を目指し、できる限り多様な立場から意見を言えるような環境作りを行いたいと考えております。
 第一線でご活躍の先生から若手医師、そして抗酸菌感染症診療に携わる全ての医療従事者にとって、今学会が最新の知識を共有し情報交換の場となることを祈ってやみません。
 学会は3月27日、28日の2日間、長崎ブリックホールで開催致します。長崎は一年を通して新鮮な魚介を使った海鮮料理が堪能でき、また稲佐山から望む長崎の夜景は、モナコ、香港とならび世界新三大夜景に数えられる美しいものです。学会期間中または終了後などに是非お楽しみ頂ければと思います。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。


長崎大学理事・副学長
河野 茂

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