活動性分類の運用について
 
平成7年9月20日
日本結核病学会予防委員会

結核登録者に対する管理および統計の便宜に資するための病状や指示の分類については既に当委員会は声明(平成7年4月9日「結核症の活動性分類の改訂について」、結核 70:491−492、1995)を公表したが、その後国においてもこの声明に沿った方向で関連の制度の改訂が進められている。そこで改訂された分類の運用について補足することが求められている。これにつき当委員会は検討を重ねた結果、以下のように定めることが適切であると考えるに至った。以下前回改定の内容を含めてその運用の基準を掲げる。

1)病類
結核症の主な罹患臓器によって以下のように分類する。

@肺 結 核 : 肺あるいは気管支を主要罹患臓器とする結核症。
従来便宜的にこれに含めていた結核性胸膜炎、肺門リンパ節結核、粟粒結核などはこれには含めず、肺外結核に分類する。
A肺外 結核 : 肺および気管支以外の臓器を主要罹患臓器とする結核症、および粟粒結核。肺結核と肺外結核を合併する者は「肺結核」とする。ただし粟粒結核は肺病変の如何を問わず肺外結核とする。
B初感染結核: 結核感染を受けていて抗結核薬の投与を必要とする者など。「マル初」例。


2)菌所見
肺結核について、診断時の結核菌検査所見によって以下のように分類する。治療開始後6ヶ月以内に、AあるいはBの者でより若い番号の所見が得られた場合にはこれに訂正する。ただし@、AあるいはBだった者が非定型抗酸菌陽性と判明した場合はC「非定型抗酸菌陽性」に変更する。この分類は登録後6ヶ月以後は変更されない。
@喀痰塗抹陽性 : 結核菌喀痰塗抹陽性の者。
Aその他の結核菌陽性: 喀痰塗抹以外の検体・検査法を用いた検査で結核菌陽性の者。例えば喀痰塗抹陰性で培養陽性のもの、気管支内視鏡検査で塗抹陽性の者、核酸診断検査で陽性の者など。
B菌陰性その他 : 結核菌陰性の者。検査を行われなかった場合を含む。
C非定型抗酸菌陽性 : 非定型抗酸菌陽性例。
臨床的に意味のある場合(注1)に限る。


3)治療の既往
今回の登録時より以前の結核に対する化学療法の状況によって以下のように区分する。この区分は全登録期間を通して変更されない。
@初回治療: A以外の者。
A再 治 療 : 結核に対する化学療法を過去に1ヶ月以上受け、かつその時の治療終了後2ヶ月以上経過している者。


4)活動性分類
4-1.分類の原則
現在結核のために登録されている者に対する管理の区分を示す分類である。最新の医師の診断(注2)による指示とその
診断の時期からの経過期間に基づいて随時決定される。
@活 動 性 : 結核の治療を必要とする者。
A不活動性  : 治療を必要としないが経過観察を必要とする者。
B活動性不明: 病状に関する診断結果が得られない者。

4-2.区分の変更
この分類の変更および登録者の登録からの削除については、以下の基準に基づいて保健所長が判断する。

(1)不活動性
予定の治療を順調に終了した者は不活動性に移行する。
さらに、活動性結核であったが医療費公費負担申請の有効期限を過ぎて2ヶ月以上経過した時点でもまだ公費負担申請が行われていない者であって、最近の菌所見が2回ともに陰性であることが知られている場合には「不活動性」としてよい。

(2)活動性不明
「病状に関する診断結果が得られない」とは最近1年以内の病状に関する診断結果が得られない状態と解釈する。

(3)不活動性の者の登録削除

はじめて「不活動性」に区分されてから最長3年間を限度とし、以下の基準に基づき登録から削除する。

@肺結核塗抹陽性初回治療例であって順調に治療を完了した者では治療終了後2年で削除する。なお、「治療基準」に定める期間を越えて長期に治療が行われた例については、その超過期間を考慮してより早期に削除してもよい。
A肺結核「その他の結核菌陽性」、「菌陰性その他」および肺外結核で順調に治療を完了した者では治療終了後それぞれ2年、1年で削除する。なお、「治療基準」に定める期間を越えて長期に治療が行われた例については、その超過期間を考慮してより早期に削除してもよい。
B上記@、Aにかかわらず、再発のおそれがとくに著しいと思われる者については治療終了後3年以内の範囲で経過観察を継続する。
ここで「再発のおそれがとくに著しいと思われる者」とは、例えば再発例、受療が不規則だった者、薬剤耐性のあった者、糖尿病・塵肺・人工透析患者・副腎皮質ホルモン剤使用患者、その他の免疫抑制要因を持った者、その他医師がそのように判断する者を指す。
C初感染結核(マル初)例では結核感染の疑いが特に濃厚な者では治療終了後1年間、その他の者では治療終了と同時に削除する。

(4)活動性不明の者の登録削除
活動性不明の者については病状把握のため管理検診の実施が必要であるが、これに3年以上継続して応じない者については、知られた最後の菌所見が陰性である者および結核菌陽性所見が一度もない者に限り、登録から削除できる。それ以外の者にあっては、管理検診に5年間継続して応じない場合に登録削除としてよい。

5)総合的な分類
結核のために登録されている者への指導のためには上記の各分類を適宜組み合わせて区分するが、統計上の便宜のためには以下のような総合的な区分を用いる。

 5-1.新登録者に関する統計
    
a)肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・初回治療
    b)肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・再治療
    c)肺結核活動性・その他の菌陽性
    d)肺結核活動性・菌陰性その他
    e)肺外結核活動性
    f)マル初(別掲)
    g)非定型抗酸菌陽性(別掲)
 
 5-2.現在登録者に関する統計
    a)肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・初回治療
    b)肺結核活動性・喀痰塗抹陽性・再治療
    c)肺結核活動性・その他の菌陽性
    d)肺結核活動性・菌陰性その他
    e)肺外結核活動性
    f)不活動性
    g)活動性不明
    h)マル初(別掲)
    i)非定型抗酸菌陽性(別掲)

(注1)「臨床的に意味のある場合」とは「非定型抗酸菌症として治療を必要とする程度」を意味する。これについては例えば国立療養所非定型抗酸菌症共同研究班などの診断基準(結核 60:51,1985)がある。
(注2)ここでいう「診断」とは肺結核については結核菌検査あるいは胸部エックス線検査、肺外結核については必要な臨床的・理学的検査を意味する。

日本結核病学会予防委員会
委員長   森     亨    
委  員   久世  彰彦、  佐藤   博、  前田  秀雄
    山岸  文雄、  荒川  正昭、  五十里  明
    門    政男、  倉岡  敏彦、  津田  富康
この報告を個人的な利用に限りダウンロードあるいはコピーをして使っても構いませんが、複数部コピーして配布するような場合には、結核病学会事務局の許可を得て下さい。