抗酸菌検査の精度保証(6)
抗酸菌検査施設を対象とした結核菌薬剤感受性試験の外部精度評価

                               平成20年10月 

日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会
日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会では、 2002年から継続して結核菌薬剤感受性
検査の外部精度評価を実施しており、 2006年度も検査センター及び病院検査室を対象
としてパネルテストを実施した。
結核菌10株を小川培地上に発育した状態で送付した。今回送付する菌株はSupra-
national Reference Laboratory Network (SRLN)で毎年実施されている薬剤感受性
検査外部精度保証プログラムに使用された菌株を用いた。検査薬剤は、 結果の安定性
を考慮して Isoniazid(INH)、Rifampicin (RFP)、Ethambutol (EB) 及びStreptomycin
(SM)とした。検査センター31施設(保健所1施設を含む)、 病院68施設が研究に参加し
最終的に検査センター1施設、病院2施設が未回答であり、結果回収率は97.0%であった。
結核菌は万国郵便条約に基づく三重包装(国連容器:SAF-T-PAK(R))にて郵送したが、
基本的に2〜3日以内に各施設に届いた。 継代培養時に1施設で1株のみ発育不良が報告
されたが、雑菌汚染等の報告はなかった。 
 検査には各施設で通常使用している方法 (キット等)が用いられている。やはりコ
ンパクトさや 経済性からマイクロタイター法が選択されている場合が多かったが、
MGIT ASTによる迅速法の利用も進んでいた。具体的には、ビットスペクトルSRが42施
設(43.8%)ウエルパックSが32施設(33.3%)、BACTEC MGIT 960による MGIT ASTが8
8施設(8.3%)、ブロスミックMTB-Iが施設(8.3%)、1%小川培地が4施設(4.2%)、
ルシミックMTB-SRとIn-House PCRがそれぞれ 1施設(各1.0%)で実施されていた。5施
M設で複数の方法を用いていたが、 これらはブロスミックTB-Iと1%小川培地の組み合
わせが1施設、ブロスミックMTB-IとウエルパックSが2施設、MGIT ASTとビットスペク
トルSRが1施設、MGIT ASTとウエルパックSが1施設であった。これらの施設については
精度評価は両方の検査法について行ったが、統計的な解析には使用頻度の高い方の結
果を使用した。
各施設から送られた薬剤感受性検査を、 SRLNの標準結果と比較して解析した。表1は
参加施設全体の精度を薬剤別に示したものである。 INHでは感度平均が99.7%(80〜
100)で、特異度平均は99.4%(60〜100)であった。 耐性的中率平均が 99.5%
(71.4〜100)、感受性的中率平均が 99.8% (83.3〜100)、 一致率平均が 99.5%
(80〜100)であり、κ指数の平均は0.99であった。
同様にRFPでは感度平均が97.8%(80〜100)で、特異度平均は98.1%(20〜100)であ
った。耐性的中率平均が97.8%(55.6〜100)、感受性的中率平均が97.9%(83.3.〜
100)、一致率平均が97.9%(60〜100)であり、κ指数の平均は0.959であった。SMで
は感度平均が91.7%(60〜100)で、特異度平均は89.5%(40〜100)であった。耐性
的中率平均が91.9%(62.5〜100)、感受性的中率平均が93.1%(71.4〜100)、一致
率平均が90.6%(70〜100)であり、κ指数の平均は0.812であった。最後にEBでは感
度平均が 93.0%(20〜100)で、特異度平均は89.8%(0〜100)であった。耐性的中
9率平均が92.9%(50.0〜100)、感受性的中率平均が5.0%(55.6〜100)、一致率平
均が91.4%(50〜100)であり、κ指数の平均は0.828であった。κ指数からみると、
全ての薬剤で平均が0.8を越えており、ほぼ標準結果と一致した判定となったが、INH
とRFPに比べると、SMとEBの精度は低い傾向があった。
さらに薬剤別の結果を方法毎に示したのが表2である。κ指数をみると、INHについて
は全ての方法で0.8を越えているが、RFPについてはBrothMIC MTB-Iの値が0.7とやや
低かった。また、SMについてはウエルパックS と BrothMIC MTB-Iで0.8を下回った。
さらにEBではMGIT、BrothMIC MTB-I および1%小川標準法でκ指数の平均値が0.8以下
であった。特にMGITでEBの感度が平均45.0%と低く、耐性過小評価の傾向があった。
今回全体としての平均的精度は、INH及びRFPの感度・特異度が95%を越えており、全ての
被験薬剤に関する一致率も90%を越えて、WHO/IUATLD Stop TB Laboratory subgroupの
提唱する基準を満足するものであった。しかしながら、この基準を満足している施設の数は54
施設(56.3%)に過ぎず、特にEBでは感度60%、特異度40%という施設も存在した。これらの
施設について全て立入による改善活動を実施することは困難と思われ、 パネルテスト結果を
受けた各施設での改善活動に関する調査を実施する必要があると思われた。
    表1 パネルテストによるの薬剤別の外部精度評価成結果

            INH         RFP               SM      EB

平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値 平均値 最大値 最小値
感度 0.997 1.000 0.800 0.978 1.000

0.800

0.917

1.000

0.600

0.930

1.000

0.200

特異度 0.994 1.000 0.600 0.981 1.000

0.200

0.895

1.000

0.400

0.898

1.000

0.000

耐性的中率 0.995 1.000 0.714 0.978 1.000

0.556

0.919

1.000

0.625

0.929

1.000

0.500

感受性的中率 0.998 1.000 0.833 0.979 1.000

0.833

0.931

1.000

0.714

0.950

1.000

0.556

一致率 0.995 1.000 0.800 0.979 1.000

0.600

0.906

1.000

0.700

0.914

1.000

0.500

κ指数 0.990 1.000 0.959 0.812 0.828


表2 パネルテストによる薬剤感受性検査外部精度評価の薬剤・方法別結果
                         方法別成績(平均値・最小値・最大値)
       ビットスペクトル-SR      ウエルパックS     MGIT         BrothMIC MTB-1   1%小川標準法       総計
Mean 最大値 最小値 Mean 最大値 最小値 Mean 最大値 最小値 Mean 最大値 最小値 Mean 最大値 最小値 Mean 最大値 最小値
0.993 1.000 0.800

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000 1.000

1.000

1.000 1.000 0.997 1.000 0.800
中率 0.985 1.000 0.600

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000 0.800

1.000

1.000 1.000 0.994 1.000 0.600
的中率 0.993 1.000 0.714

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

0.979

1.000 0.833

1.000

1.000 1.000 0.995 1.000 0.714
0.996 1.000 0.833

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000 1.000

1.000

1.000 1.000 0.998 1.000 0.833
0.989 1.000 0.800

1.000

1.000 1.000 1.000

1.000

1.000

1.000

1.000 0.900 1.000 1.000 1.000 0.995 1.000 0.800
0.978

1.000

1.000 1.000 0.990
0.956 1.000 0.800

1.000

1.000 0.800

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

0.950

1.000

0.800 0.978 1.000 0.800
1.000 1.000 1.000

1.000

1.000 0.800

1.000

1.000

1.000

0.700

1.000

0.600

1.000

1.000

1.000 0.981 1.000 0.200
中率 1.000 1.000 1.000 0.995 1.000 0.833

1.000

1.000

1.000

0.815

1.000

0.714

1.000

1.000

1.000 0.978 1.000 0.556
的中率 0.964 1.000 0.833 0.995 1.000 0.833

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000 0.958

1.000

0.833 0.979 1.000 0.833
0.978 1.000 0.900

1.000

1.000 0.900

1.000

1.000

1.000

0.850

1.000

0.800 0.975

1.000

0.900 0.979 1.000 0.600
0.956

1.000

0.700 0.950 0.959
0.844 1.000 0.600 0.965 1.000 0.800 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.800 0.950 1.000 0.800 0.917 1.000 0.600
中率 0.970 1.000 0.800 0.826 1.000 0.400 0.900 1.000 0.800 0.750 1.000 0.600 0.950 1.000 0.800 0.895 1.000 0.400
的中率 0.975 1.000 0.800 0.877 1.000 0.625 0.917 1.000 0.833 0.801 1.000 0.714 0.958 1.000 0.833 0.919 1.000 0.625
0.873 1.000 0.714 0.974 1.000 0.833 1.000 1.000 1.000 0.979 1.000 0.833 0.958 1.000 0.833 0.931 1.000 0.714
0.907 1.000 0.800 0.895 1.000 0.700 0.950 1.000 0.900 0.875 1.000 0.800 0.950 1.000 0.900 0.906 1.000 0.700
0.815 0.791 0.900 0.750 0.900 0.812
0.963 1.000 0.800 0.974 1.000 0.750 0.450 1.000 0.200 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.930 1.000 0.200
中率 0.881 1.000 0.000 0.948 1.000 0.400 1.000 1.000 1.000 0.750 1.000 0.200 0.750 1.000 0.000 0.898 1.000 0.000
的中率 0.911 1.000 0.500 0.959 1.000 0.625 1.000 1.000 1.000 0.846 1.000 0.556 0.875 1.000 0.500 0.929 1.000 0.500
0.972 1.000 0.833 0.983 1.000 0.800 0.646 1.000 0.556 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.950 1.000 0.556
0.922 1.000 0.500 0.961 1.000 0.700 0.725 1.000 0.600 0.875 1.000 0.600 0.875 1.000 0.500 0.914 1.000 0.500
0.844 0.921 0.450 0.750 0.750 0.828


日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会
委員長 嶋 哲也   
副委員長 御手洗 聡
委員 阿部千代治 大野 秀明 桶谷 典弘 鎌田 有珠
塩谷 隆信 中島 一光 樋口 武史 江田  良輔

(出典:結核.Vol.83, No.12)

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