抗酸菌検査の精度保証(5)
抗酸菌検査施設を対象とした結核菌薬剤感受性試験の外部精度評価

                               平成19年6月 

日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会
 日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会では、2002年から継続して結核菌薬剤感受性
試験の外部精度評価を実施しており、2005年度も検査センター及び病院検査室を対象として
感受性試験制度評価を実施した。
 結核菌10組20株を、小川培地上に発育した状態で参加施設に送付した。
菌株はWHO Supranational Reference Laboratory Network (SRLN)で毎年実施している薬剤
感受性試験精度管理に使用された菌株のうち、基本的に高い施設間一致が得られているも
のを選定して使用した。これらの株については、既にSRLNにて評価が定まっており、
その最終的な評価を基準とした。今回の試験パネルにおけるそれぞれの薬剤に対する耐性
菌の割合は、INHに関して70%、RFP、SMについて60%、EBについて50%となっている。結果
については「感度」、「特異度」、「耐性的中率」、「感受性的中率」、「一致率」、「再現性」及び
「κ指数」にて評価した。最終的に、検査センター28施設、 病院検査室38施設、保健所検査
室1室が研究に参加した。1施設が途中で棄権した事から参加施設数は66となり、結果回収
率は100%であった。 
 薬剤別の結果を表1に示す。INHでは感度平均が99.9%(92.9〜100)であり、95%以下施設
が1施設あった。特異度平均は99.7%(83.3〜100)であり、95%以下の施設が1施設認められ
た。RFPでは感度平均が96.8%(66.7〜100)であり、 95%以下の施設が14施設あった。特異
度平均は99.4%(87.5〜100)であり、95%以下の施設が3施設認められた。SMでは一致率平
均が94.7%(80.0〜100)であり、一致率が90%を下回る施設はなかった。10施設認められた。
EBでは一致率平均が98.7%(90.0〜100)であり、一致率が90%を下回る施設はなかった。
 施設分類別にみても、病院検査室と検査センターの間でパネルテストの結果に有意な差は
認められなかった(表2)。
 SRLNでは基本的にINHおよびRFPに対して感度、特異度、再現性を95%以上に保つ事を基
本とし、主要4剤について一致率90%以上を目標としている。今回の参加全施設の平均では、
この基準を満たしていた。
 SMにおける感度が平均92.6%(66.7-100)、一致率は94.7%(80.0-100)とやや低かったが、
これは被験菌群のうち、二つの株の判定一致率が比較的低かった事による。ひとつの株につ
いてはSRLNでの判定一致率が95%と高いことが示されているが、もうひとつの株については、
今回故意にSRLNでも一致率の比較的低い株(65%)を選定した。これは2003年度及び 2004
年度に認められたSMの感受性結果に関する「過小評価(耐性株を感受性に判定する)」傾向
の原因について検討する事が目的であったが、この株に関する今回の研究参加施設間の一
致率は81.3%とSRLNよりも高く、一概に過小評価の傾向があるとは言えない結果であった。
これまでは感受性に判定される傾向が培地に含まれる薬剤濃度に起因する可能性を考察し
ていたが、検査手順(技術)に問題があることも考慮すべき結果となった。
 施設分類別に結果を比較したところ、病院検査室の精度のばらつきが検査センターに比較
して大きいように思われたが、この差異は2004年度に病院検査室と検査センターを比較した
時に比べて縮小していた。また、各施設群で、 それぞれの評価因子が0.9を下回る施設の割
合も減少しており、精度の向上が認められる結果であった。
しかしながら、二年連続でRFPの感度が95%を下回った施設が3施設認められており、このよ
うな施設には立入調査が必要と考えられた。パネルの構成による問題点を効率良く除去して
精度の低い施設を検出するには、このように連続して低い精度を示すことを基準として用いる
のが適当と考えられた。
 結果として示されてはいないが、今回の研究では、参加施設を募る段階でパネルテストの検
体数の多さを理由に辞退された施設が多かった。実際にいくつかの施設では、パネルテスト
を実施するにあたり、 業務時間内で 20株一度に薬剤感受性試験を行うことはできず、 一回
に5株ずつ4回に分割して実施していた。またパネルテストにかかる費用も大きな問題であり、
今後は一回あたりの検体数を減らし、年複数回実施することを検討する必要があると思われ
た。
    表1 薬剤感受性試験の薬剤別外部精度評価成績

            INH         RFP            SM            EB

平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 平均値
感度 0.999 0.929 1.000 0.968 0.667

1.000

0.926 0.667

1.000

0.991 0.800

1.000

特異度 0.997 0.833 1.000 0.994 0.875

1.000

0.979 0.750

1.000

0.983 0.800

1.000

耐性的中率 0.999 0.933 1.000 0.996 0.917

1.000

0.987 0.857

1.000

0.986 0.833

1.000

感受性的中率 0.998 0.857 1.000 0.962 0.667

1.000

0.917 0.649

1.000

0.992 0.833

1.000

一致率 0.998 0.950 1.000 0.979 0.800

1.000

0.947 0.750

1.000

0.987 0.900

1.000

再現性 0.998 0.900 1.000 0.988 0.800

1.000

0.977 0.800

1.000

0.998 0.800

1.000

κ指数 0.996 0.956 0.892 0.974

1.000


表2 施設分類別にみたパネルテスト成績
             感度          特異度          一致率         再現性
検査室分類 薬剤 平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 最大値 平均値 最小値 最大値 κ指数
病院検査室 INH 0.998 0.929

1.000

0.996

0.833

1.000 0.997

0.950

1.000

0.996 0.800

1.000

0.994
(n=39) RFP 0.974 0.667

1.000

0.994

0.875

1.000 0.982

0.800

1.000

0.984 0.800

1.000

0.963
SM 0.920 0.667

1.000

0.984

0.750

1.000 0.946

0.750

1.000

0.972 0.833

1.000

0.889
EB 0.990 0.800

1.000

0.977

0.800

1.000 0.983

0.900

1.000

0.984 0.833

1.000

0.996
検査センター INH 1.000 1.000

1.000

1.000 1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000

1.000
(n=27) RFP 0.900 0.833

1.000

0.995

0.875

1.000 0.975

0.900

1.000

0.993 0.900

1.000

0.964
SM 0.935 0.667

1.000

0.972 0.750

1.000

0.950

0.800

1.000

0.981 0.800

1.000

0.897
EB 0.993 0.900

1.000

0.993 0.800

1.000

0.993

0.900

1.000

0.993 0.900

1.000

0.985


日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会
委員長 嶋 哲也   
副委員長 御手洗 聡
委員 阿部千代治 大野 秀明 桶谷 典弘 鎌田 有珠
竹山 博泰 中島 一光 樋口 武史 小栗 豊子
斎藤   肇 長沢 光章 塩谷 隆信
協力

(出典:結核.Vol.83, No.11)

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日本結核病学会事務局
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