「結核医療の基準」の見直し 2008年

 平成20年4月20日     

日本結核病学会治療委員会

T.はじめに
 当委員会は、2002年と2003年に初回治療患者の標準治療と、標準治療の中心となる
イソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)が使用できない場合の治療法、さらに各薬剤
の標準的な用法・用量について検討し発表した1)2)。その後5年を経て、新しいフルオロ
キノロン系薬剤等が利用可能となるなどの進歩が見られ、また、DOTS(Directly
Observed Treatment, Short course, 直接服薬確認短期化学療法)の普及・発展に伴い
間欠療法の必要性が増している。
 一方、2007年4月からは結核予防法が廃止され、結核対策は改正感染症法により進
められている。この中で、従来の化学予防が「潜在性結核感染症の治療」と位置付けら
れたことは重要である。また、2006年にはInternational Standards for Tuberculosis
Care (ISTC)3)が発表され、本学会も2007年6月にこれに賛同の意を表明した。しかし
その内容、および米国胸部疾患学会(American Thoracic Society、ATS)等諸外国にお
ける標準治療4)と、日本において行われている結核医療との間には微妙な差が認めら
れ検討が必要となった。
 今回の見直しは、以上のような最近の状況の変化を踏まえて、間欠療法について記載
すると共に、2002年と2003年に発表した2つの報告に見直しを加え、整理して報告するも
のである。改正感染症法の下で、これまで以上に質の高い結核医療が行われることを願
っている。

U.「基準の見直し」の視点
 2005年の結核予防法改正時に結核の治療完遂のための服薬支援、いわゆる日本版
DOTSが規定され、これが徐々に普及しつつある。同時に直接服薬確認のような十分な
服薬支援を必要とする患者の割合も大きくなりつつある。また、入院治療の制限や入院
期間の短縮も求められており、これまで入院治療に依存してきた日本の結核医療におい
ても、外来治療における服薬支援の役割が重くなるであろう。現在のところ、外来での対
面式服薬確認は一部の患者にしか適用されておらず、今後はこれを強化する必要があ
る。このような状況のなかで、服薬回数の低減、患者の負担の軽減などの利点をもった
間欠療法は今後積極的に取り入れるべき治療法である4)5)6)
 薬剤の用法・用量については、「結核医療の基準」の見直し―第2報―における提言に
加え、間欠療法についての記載を追加するとともに、潜在性結核感染症の治療にも用い
られるINHについては小児の用量を記載した。
 ISTC)および米国の基準4)等による標準治療において、エタンブトール(EB)の維持
期における使用は勧められていない。しかし、日本においては(A)法では6ヶ月まで、(B)
法では9ヶ月まで使用してもよいとされている。本委員会ではEBの使用期間について改め
て検討し、不要な薬剤の投与およびそれによる副作用の防止のためEB(またはストレプ
トマイシン(SM))の中止条件を明記した。また、粟粒結核、広汎空洞型等の重症例や菌
陰性化遅延例等において維持期治療期間の延長を認めていたが、その条件と表現を再
検討し、延長可能な条件をやや拡大した。
 また、フルオロキノロン系薬剤については、薬剤耐性結核、特に多剤耐性結核の治療
において国際的に必須の薬剤となっており4)7)、さらに近年モキシフロキサシン(MFLX)
等新たな薬剤の諸外国での治療成績が報告8)されているところから、抗菌剤として使用
可能となった薬剤の記載を追加した。

V.化学療法の原則と抗結核薬
1)抗結核薬
 現在の結核医療の基本的目標は、結核患者の体内に生存する結核菌を可及的に撲滅
することにある。この目標を達成するためには、患者が感染している菌に有効な(感受性
である)、作用点が異なる薬剤を初期には少なくとも3剤以上組み合わせた多剤併用方式
で最短でも6ヶ月間継続して投与することが不可欠である。有効かつ安全な治療法を選択
し、それが必要な期間継続されることが結核治療の基本であることにかわりはない。
 現在わが国で使用可能な抗結核薬をその抗菌力と安全性に基づいて、表1のように3群
に区分した。フルオロキノロン剤についてはその保険適応承認が得られていないことから
末尾に記したが、結核治療、特に薬剤耐性菌および副作用のため他の薬剤が使用困難
な状況における有用性は高いものである。本学会としては、これらの薬剤が抗結核薬とし
て早期に承認されるよう、引き続き当局に要望するものである。

2)抗結核薬の標準投与量 (表2)
 抗結核薬にはアレルギ−的(様)機序に起因する副作用と共に、薬剤固有の副作用も多
く認められる。アレルギ−反応は予見困難であるが、薬剤固有の副作用は主に薬剤の投
与量と関連しており9)、 薬剤固有の副作用の発現を防止するには、「菌に有効で、副作
用発現の少ない」投与量を予め設定しておく必要がある。
 当委員会は抗結核薬の体内動態に関する知見10)、ATSの結核治療に関する声明4)
長年蓄積されてきたわが国の治療実績、などに基づいて、成人の抗結核薬の標準投与量
について、1日当たり・体重1kg当たりの標準投与量(mg/体重kg/日)と1日当たりの最大投
与量(mg/日)を設定し提案した(表2)。また、薬剤の有効血中濃度の確保と直接服薬確認
療法(DOT)と短期療法の普及を推進する観点から服薬を原則1日1回とすること(エチオナ
ミド(TH)・パラアミノサリチル酸(PAS)・サイクロセリン(CS)を除く)とした1)
 なお、高齢者では一般に老化に伴う諸臓器の機能低下、特に肝機能・腎機能の低下が
指摘されている。抗結核薬の多くは肝臓で代謝され、主に腎臓より排泄される(RFPは肝臓
より排泄)ため、高齢者にはこれらの機能障害に十分留意すると共に、1日当たりの最大
投与量(mg/日)の減量も考慮する必要がある。
 既に肝機能障害や腎機能障害を合併している場合は日本結核病学会治療委員会による
「肝、腎障害時の抗結核薬の使用についての見解」11)を参照し、投与量を別途設定する必
要がある。

W.初回治療患者の標準治療
 初回治療患者においては、治療開始時に薬剤感受性が判明していることは例外的である。
未治療耐性である可能性も考え、確実に菌の撲滅をはかるためには多剤併用が必須であ
る。既治療患者であっても、以前の治療において薬剤耐性が認められずかつ治療を完遂し
た場合においては、初回治療に準じて標準治療を勧める。いずれの場合においても、薬剤
感受性検査の結果を確認した上、使用薬剤に薬剤耐性が認められれば章Yに従って治療
方針を再検討することが必要である。

1)初期強化期の薬剤選択
first-line drugs(a) 3剤とfirst-line drugs(b)のいずれか1剤を加えた初期2ヶ月間4剤併用療
法が「菌の撲滅」という治療目標を達成し得る最強の治療法であり、かつ6ヶ月(180日)間で
治療を完了し得る最短(short course)の治療法として、既に世界中に広く普及している4)
12)

 以上の観点より、初回治療患者の標準療法として、その病型や排菌の如何に関わらず、
表3の(A)法を用いて治療することとし、副作用等のためピラジナミド(PZA)が投与不可の
場合に限り(B)法を用いる。
 なお、肝硬変、C型慢性肝炎等の肝障害合併患者、80歳以上の高齢者では重篤な薬剤
性肝障害がおこる可能性が高くなるので、当初から(B)法を選択することを検討する。また、
妊娠中の女性に治療を行う場合、SMによる胎児への第八脳神経障害が危惧され、また、
PZAの胎児に対する安全性は未だ不明であるので、妊娠中の女性には両薬剤は用いない。
妊娠中の女性に対する治療法としては、(B)法で第3の薬剤としてEBを用いることを原則と
する。
(A)法で治療を開始し、菌が薬剤に感受性であることが確認され、副作用なく薬剤が継続可
能である例では、章Xに示す間欠療法も検討する。

2)維持期におけるEB(またはSM)の使用
 (A)法、(B)法いずれにおいても、菌がRFP及びINHに感受性であることが確認された場合
には、EBまたはSMを3ヶ月目以降の維持期に使用する意義は少なく、またこれ等薬剤は長
期に使用することにより副作用の危険性も高まるので、原則として3ヶ月目以降は中止する。
なお、INH耐性とは小川法を用いた0.2μg/mlにおける耐性である13)。なおMGIT法による検
査を採用している場合には0.1μg/mlが耐性濃度となる。菌陰性であって薬剤感受性が確認
できないが、薬剤耐性である可能性が低く臨床的に改善が明らかである場合には、原則とし
てそのようなことが確認された時点でEB(またはSM)は中止する。

3)治療期間
 標準的治療期間は、(A)法では6カ月間、(B)法では9カ月間とする。
 但し、有空洞(特に広汎空洞)例や粟粒結核などの重症例、3ヶ月目以後(初期2カ月の治
療終了後)にも培養陽性である例、糖尿病や塵肺合併例、全身的な副腎皮質ステロイド薬・
免疫抑制剤併用例など、および再治療例、では3カ月間延長し(A)法は9ヶ月、(B)法は12ヶ月
まで行うことができる。
 なお、4ヶ月を越える排菌持続例では菌の耐性化を考慮して、直近の菌を用いた感受性検
査を再度実施するべきである。

4) 服薬支援
 結核治療の基本は計画された薬剤が予定された期間確実に継続投与されることであり、
計画通り治療を完遂するための特別な配慮も求められている。治療に際しては、本学会
保健看護委員会によるガイドライン14)等によって、それぞれの患者に適切なDOTSを実
施する。
 とくに、主治医にあっては患者の服薬・受診状況の点検や未受診の場合の受診の督促、
保健所との連絡など、また保健所にあっては必要な患者に対する直接服薬確認、家庭訪
問や主治医との連絡を介しての緩やかな服薬確認を確実に実践するなど、主治医と保健
所の連携のもとに患者の服薬支援が進められるべきである。また治療評価のための保健
所による治療経過の把握(コホート分析)は日本版DOTSの必須の要件として確実に行わ
れる必要がある。

5)標準治療が行えない状況
 INH, RFPのいずれか1剤以上に薬剤耐性が認められた場合、副作用等のためRFPまた
はINHが投与不可の場合は、章Yに従い治療法を選択する。結核治療の経験が少ない場
合には、原則として結核の専門医に紹介するか相談した上で治療法を変更する。
 但し、わが国には結核医療に関する専門施設や専門医を認定する制度がないので、相
談すべき近隣の専門施設や専門医が不明の場合は最寄りの保健所に相談し、専門医の
紹介を受ける。
なお,副作用が疑われる場合等、これらの薬剤の安易な投与中止により治療の長期化は
免れず、治療目標の達成が不完全となることも懸念される。最も頻度が高い副作用である
肝障害については、本委員会が対応の指針15)を発表しているので、それを参考にできるだ
けRFPとINHを中止せず継続するように試みるべきである。また、RFPまたはINHのアレルギ
−様の副作用(発疹・発熱など)が疑われ投与を中止した場合には、症状の消失後、専門医
と相談の上、速やかに「服薬をいったん中止し、極少量より再投与し、漸増する」減感作療
16)を試みることも必要である。
 また、治療開始から概ね3ヶ月以内に胸部X線所見の悪化、リンパ節の腫脹等が一時的
に認められることがあるが、結核菌検査において陰性化または菌量の減少が認められてい
る場合には治療は有効であると考え、薬剤の変更は行わず薬剤感受性検査の結果を得て
から治療方針を決定する。

X.間欠療法
 間欠療法は少ない服薬確認回数で、確実な治療継続の確保が可能な治療法である。日本
版DOTSにおいて、特に外来で直接服薬確認が必要であると判断される場合には積極的に
取り入れるべき治療法である6)17)

1)対象とできる条件
 PZAを加えた標準治療(A)法を開始し、結核菌が培養で確認されRFP、INHの両剤に感受性
であることが確認された例を対象とする。(B)法による治療例、また副作用のためRFP、INH
またはPZAが中止された例では再発率が高いので間欠療法は不可である。また、HIV感染者
も間欠療法は不可である。

2)治療方式(表4)
初期2ヶ月間4剤の治療終了後、RFPとINHの2剤を4ヶ月間週2回、または週3回服用する。広
汎空洞型では週3回とする。初期治療における第4の薬剤はEBまたはSMであるが、SMの方
が殺菌力は強いので、重症型ではSMを選択することが望ましい。
治療期間は6ヶ月を原則とするが、糖尿病合併例、広汎空洞型、再治療例は3ヶ月延長して
9ヶ月とする。

3)薬剤投与量
@RFP:全期間 10mg/kg、一日最大投与量 600mg(標準治療、表3に同じ)
AINH:初期2ヶ月間毎日投与、5mg/kg、一日最大投与量300mg
間欠期15mg/kg, 一日最大投与量900mg
PZA, EB, SMは初期2ヶ月間、投与量は標準治療(表3)と同じとする。
4)DOTSの実施
 間欠期間は1回でも服薬を怠ると治療失敗につながるので、必ずDOT(直接服薬確認治療)
を行う必要がある。すなわち、原則としてすべての服薬は確認者の面前で行う。電話やFAX
での確認、空包による確認は不可である。服薬確認者は、医師、看護師、保健師、薬剤師等、
また訪問看護、訪問介護者、その他のDOTSについて訓練された者等とする。患者が服薬の
ために来診しなかった場合には直ちに必要な行動を起こせる体制を整えておくことが必要で
ある。

Y.標準治療が行えない場合の治療法
 標準治療が行えない場合には、以下の治療の原則に従って薬剤の選択、治療期間の決定
を行う。
@治療当初は投与可能な感受性のある薬剤を最低でも3剤(可能なら4〜5剤)を菌陰性化後
6ヵ月間投与し、その後は長期投与が困難な薬剤を除いて治療を継続する18)。(具体的な継
続期間は以下の記述を参照。)
A治療中に再排菌があり薬剤耐性獲得が強く疑われる場合、使用中の薬剤のうち耐性化が
疑われる1剤のみを他の薬剤に替えることは、結果的に新たな薬剤による単独療法となる可
能性が大きく、その薬剤への耐性を誘導する危険性が高いので禁忌である。治療薬を変更
する場合は一挙に複数の有効薬剤に変更する。
B薬剤の選択は表1の記載順に従って行う。ただし、SM、カナマイシン(KM)、エンビオマイ
シン(EVM)は同時併用できない。抗菌力や交差耐性を考慮し、SM→KM→EVMの順に選択
する。また、フルオロキノロン薬も複数を同時併用はできない。抗菌力や副作用等を勘案し、LVFX、MFLX、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンの中から1剤
を選択する。

1)RFPまたはINHが投与できない場合の治療法
 RFPとINHは現代の結核治療において最も強力な不可欠の薬剤であるが、菌の耐性化や
副作用などのためにこれらの薬剤が投与できない場合には体内の生菌を可及的に撲滅
するという所期の治療目標の達成はより難しくなる。このため、体内の生菌数が最も多い
と考えられる治療当初は結核菌に有効とされるフルオロキノロン薬7)8)19)を含めた感受
性のある他の抗結核薬を4剤以上併用して治療することが望まれる。
 以下の例示を参考にして、有効な治療薬を複数選択し、多剤併用療法により治療する。
ただし、例示した治療薬の一部が投与できない場合には、表1の優先順位に従って
second-line drugs (表のKM以下の薬剤)またはフルオロキノロン薬(LVFXなど)から感受性
のある薬剤を順次選択し、変更する。
 なお、治療期間は標準治療法に準じて、粟粒結核や広汎空洞型などの重症、治療開始
3ヵ月後も持続する培養陽性例、糖尿病や塵肺合併例、全身的な副腎皮質ステロイド薬・
免疫抑制剤の併用例、などはさらに3〜6ヵ月間延長してもよい。

(1) RFPが投与できない場合の治療法(INH感受性でINH投与可の場合)
@PZAが投与可能な場合
 INH・PZA・SM(またはKMまたはEVM)・EB・(LVFXまたは感受性のあるsecond-line drug
の1剤)の4〜5剤で菌陰性化後6ヵ月まで治療し、その後INH・EB・(LVFXまたは感受性の
あるsecond-line drugの1剤)の2〜3剤で治療する。治療期間は菌陰性化後18ヵ月間と
する。 ただし、SM(またはKMまたはEVM)の投与は最大6ヵ月間とする。

APZAが投与できない場合
 INH・SM(またはKMまたはEVM)・EBにLVFXまたは感受性のあるsecond-line drugの
1剤を加えた4剤で菌陰性化後6ヵ月まで継続治療し、その後INH・EB・LVFXまたはsecond-
line drugの1剤の3剤 で治療する。治療期間は菌陰性化後18〜24ヵ月間とする。ただし、
SM(またはKM, EVM)の投与は最大6カ月間とする。

(2) INHが投与できない場合の治療法(RFP感受性でRFP投与可の場合)
@PZAが投与可能な場合
 RFP・PZA・SM(またはKMまたはEVM)・EB・(LVFXまたは感受性のあるsecond-line drug
の1剤)の4〜5剤で菌陰性化後6ヵ月まで継続治療し、その後RFP・EBの2剤で治療する。
治療期間は9ヵ月間、または, 菌陰性化後6ヵ月間のいずれか長い期間とする。ただし、
SM(またはKMまたはEVM)の投与は最大6ヵ月間とする。
APZAが投与できない場合
 RFP・SM(またはKMまたはEVM)・EB・LVFXまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤
の4剤で菌陰性化後6ヵ月まで継続治療し、その後RFP・EBの2剤で治療する。治療期間
は12ヵ月、または、菌陰性化後9ヵ月のいずれか長い期間とする。ただし、SM(またはKM
またはEVM)の投与は最大6ヵ月間とする。

2)RFPおよびINHが投与不可の場合の治療法
 RFPおよびINHの両薬剤が耐性あるいは副作用のため投与できない場合は、前記の原則
を踏まえて治療する。なお、多剤耐性であっても、INH 0.2μg/ml耐性、1μg/ml感受性の場
合はINHを投与してもよいが、有効薬剤数には数えない。治療期間は菌陰性化後24ヵ月間
とする。外科治療が可能な患者では治療当初から外科療法を積極的に考慮する。なお、外
科治療の成功のためにも、いくつかの有効な抗結核薬が不可欠である18)20)

 多剤耐性結核患者は感染防止のための設備を備え、かつ長期の生活に適した設備を持
った個室を備え、DOTを実施し、外科治療も可能な専門的医療機関で治療すべきである。
また、医療チ−ムは副作用の発現に細心の注意を払うと共に、治療期間が長期に及ぶこと、
治療の成功率が必ずしも高くないこと、治療薬剤の副作用やその早期発見方法、治療後の
排菌の推移、などについて患者およびその家族に繰り返し説明し、治療が完了できるように
保健所などとも協力して、バックアップすることが大切である。

Z. 肺結核および肺結核における抗結核薬以外の治療
1)副腎皮質ホルモン剤
結核性髄膜炎、結核性心外膜炎、結核が重症である場合、特に粟粒結核などで呼吸不全
や高熱など全身状態不良の状態等においては副腎皮質ホルモン剤の使用を考慮する。
2)外科治療等化学療法以外の治療を検討すべき状態
(1)肺結核
多剤耐性で病巣が限局しており切除が可能な場合には、早期から外科的治療を検討する。
適応については専門家と相談が必要であるが、切除の時期は、有効な化学療法により菌量
が減少した状態、概ね化学療法開始後3〜4ヶ月が適切である。
(2)肺外結核
リンパ節、骨・関節、腸腰筋、皮下等にある程度の大きさの膿瘍を形成した場合には、
化学療法のみでは治療効果に限界があり、病巣廓清、ドレナージ等それぞれに適切な外科
的治療が必要になる。

[. 潜在性結核感染症の治療(表5)
 診断と治療の適応については、本学会予防委員会の報告21)を参考に検討する。なお、薬
剤耐性誘導をきたさないよう、画像検査等により発病の可能性を除外しておくことが必要で
ある。使用する薬剤は原則としてINHであり、感染源がINH耐性である場合にはRFPを使用する。INHは6ヶ月または9ヶ月間、RFPは4ヶ月または6ヶ月使用する。いずれも用量は活動性
結核の場合と同じである。ただし、潜在性結核感染症として治療の対象となるのは小児が多
いが、INHの標準的用量は小児においては成人よりも高い(体重kgあたり8−15mg/日、最大
300mg/日))ので注意が必要である。

 


表1  抗結核薬のグループ化と使用の原則 
特 性 薬剤名    略号   
First-line
drugs(a)
最も強力な抗酸作用を示し,菌の撲滅に必須な薬剤
RFP,PZAは滅菌的,INHは殺菌的に作用する。 
リファンピシン*
イソニアジド 
ピラジナミド
RFP 
INF
PZA
First-line
drugs(b)
First-line drugs(a)との併用で効果が期待される薬剤
SMは殺菌的,EBは主に静菌的に作用する
ストレプトマイシン 
エタンブトール 
 
SM
EB
 
Second-line 
drugs 
First-line drugsに比し抗酸力は劣るが,多剤併用で
 効果が期待される薬剤
カナマイシン
エチオナミド 
エンビオマイシン
パラアミノサリチル酸
サイクロセリン
レボフロキサシン**
KM
TH
EVM
PAS
CS
LVFX

表は上から下に優先選択すべき薬剤の順に記載されている。なお、SM, KM, EVMの同時併用は
できない。抗菌力や交差耐性等から、SM→KM→EVMの順に選択する。
* 多くの薬剤との薬物相互作用があるので注意が必要である。特にHIV感染者において抗ウイル
ス剤投与を必要とす る場合にはリファンピシンに代わりリファブチンの使用を検討する。
** LVFXは他のフルオロキノロン剤と代えることができる。抗菌力や副作用等を考慮してモキシフ
ロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンの中から選択する.これら
フルオロキノロン剤は結核菌に対する抗菌力は。First-line drugs(b)並みに強いが、2008年本見解
発表時点では保険適応が認められていないため最後に記載した。

表2  成人の標準投与量と最大投与量 
週3回投与の場合は1000mgまで可 
初期2ヵ月は毎日投与可
毎日投与の場合は750mgまで
薬剤名 標準量
mg/kg/day
最大量
mg/body/day
 
備考  
リファンピシン

10

600

  
イソニアジド

5

300

間欠療法時の用量は本文に記載
ピラジナミド

25

1500

  
ストレプトマイシン

15*

750(1000)

週2回投与の場合は1000mgまで可
初期2ヵ月は毎日投与可
毎日投与の場合は750mgまで
エタンブトール

15(20)*

750(1000)

最初の2ヵ月間は20mg/kgを投与してもよいが,3ヶ月
以降も継続する場合には15mg/Kg(750mg/day)とるする
カナマイシン

15*

750(1000)

週3回投与の場合は1000mgまで可 
初期2ヵ月は毎日投与可
毎日投与の場合は750mgまで
エチオナミド

10

600

200mg/dayより漸増する 
エンビオマイシン

20*

1000

最初の2ヵ月間は毎日,以後は週2〜3回投与する
パラアミノサリチル酸

200

12g

  
サイクロセリン

10

500

  
レボフロキサシン

8

600

小児・妊婦は禁忌

1.投与は1日1回を原則とする。TH, PAS, CSは分割投与とする。
2.高齢者、腎機能低下者では投与量の減量を検討する必要がある。
3.腎機能低下時には、特に*の薬剤については減量、または投与間隔をあけることが必要
  である。

表3 初回治療例の標準的治療法

原則として(A)法を用いる。PZA使用不可の場合に限り、(B)法を用いる。
薬剤感受性が不明かつ症状の改善が明らかでない場合には、薬剤感受性の判明、臨床的改善
の確認までSM(またはEB)を継続する。 
(A)法:
     RFP + INH + PZAにSM(またはEB)の4剤併用で2ヶ月間治療後、RFP + INHで4ヶ月間治療する。
(B)法:
     RFP + INHにSM(またはEB)の3剤併用で2ヶ月間治療後、RFP + INHで7ヶ月間治療する。

 表4 初回治療例の間欠療法
週2回法:
    2ヶ月間毎日RFP + INH + PZA + EB(またはSM) の後、
    4ヶ月間*週2回RFP + INH
週3回法:
    2ヶ月間毎日RFP + INH + PZA + EB(またはSM) の後、
    4ヶ月間*週3回RFP + INH   

間欠期のINHの用量は15mg/kg、1日最大900mgとする。



表5 潜在性結核感染症の治療における成人・小児の投与量 
成人用量
mg/体重 kg/日
12歳以下小児用量
mg/体重 kg/日
1日最大投与量
mg/日
イソニアジド  INH

5

8〜15

300

リファンピシン RFP

10

10〜20

600


文献
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15) 日本結核病学会治療委員会:抗結核薬使用中の肝障害への対応について.結核.
2007; 82: 115 -118.
16) 日本結核病学会治療委員会:抗結核薬の減感作療法に関する提言.結核.1997;
72: 697-700.
17)Hong Kong Chest Service/British Medical Research Council:Controlled trial of 2、
4,6 months of pyrazinamide in 6-month, three-times-weekly regimens for smear positive pulmonary tuberculosis, including an assessment of a combined preparation of isoniazid, rifampin, and pyrazinamide. Results at 30 months. Am Rev Respir Dis. 1991; 143: 700 -
706.
18) 中島由槻:多剤耐性結核の治療.結核.2002; 77:805-813.
19) Berning SE:The Role of Fluoroquinolones in Tuberculosis Therapy. Drugs. 2001; 61:
9-18.
20)Pomerantz BJ, Cleveland JC, Olson HK,et al.:Pulmonary resection for multi-drug
resistant tuberculosis. J Thorac Cardiovasc Surg.2001; 121: 448-453.
21) 日本結核病学会予防委員会:さらに積極的な化学予防の実施について.結核.
2004; 79: 747-748.

表は上から下に優先選択すべき薬剤の順に記載されている。なお、SM, KM, EVMの同時併用は
できない。抗菌力や交差耐性等から、SM→KM→EVMの順に選択する。
* 多くの薬剤との薬物相互作用があるので注意が必要である。特にHIV感染者において抗ウイル
ス剤投与を必要とす る場合にはリファンピシンに代わりリファブチンの使用を検討する。
** LVFXは他のフルオロキノロン剤と代えることができる。抗菌力や副作用等を考慮してモキシフ
ロキサシン、ガチフロキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシンの中から選択する.これら
フルオロキノロン剤は結核菌に対する抗菌力は。First-line drugs(b)並みに強いが、2008年本見解
発表時点では保険適応が認められていないため最後に記載した。


日本結核病学会治療委員会
委員長 重藤えり子
副委員長 和田 雅子
委 員 高橋 弘毅 藤井 俊司 斎藤 武文
佐藤 和弘 田野 正夫 露口 一成
小橋 吉博 藤田 次郎

(出典:結核.Vol.83, No.7:527-528, 2008)

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