今後のツベルクリン反応検査の暫定的技術的基準

  平成18年5月 

日本結核病学会予防委員会

 平成17年4月からの結核予防法改定の実施にともない,結核予防法(施行規則第2条)で定められていたツベルクリン反応検査の技術的基準が廃止された。ツベルクリン反応検査は確立された医学検査技術であり,法令に拘束される性質のものではない。しかし本検査はこれまで各方面で広く上記基準に基づいて実施されてきた経緯があり,その廃止によって現場が混乱することも考えられる。そこで本学会としてはこれに代る技術的基準を示し,この検査が正しく用いられるようにすることが必要であると考える。
 日本では長年の間独自の技術基準によってツベルクリン反応検査を実施してきた。その基準には世界的に広く用いられているものと相容れない点があり,そのために日本で行われた検査結果やそれに基づく研究成果が国際的に直ちに受け入れられないなどの問題が起こっている。しかし,長年の基準を現時点で直ちに変更すれば無用の混乱を引き起こすことが予想される。そこで新たな技術基準の策定は暫定的に以下のように定めることとした。

1.日本におけるツベルクリン反応検査の適応
 ツベルクリン反応検査には一般的に以下のような適応がある。@結核感染の診断(鑑別診断や化学予防適応の決定,BCG接種の適応の決定を含む),ABCG接種の技術評価,B細胞免疫能の評価。法定のBCG接種における接種前のツベルクリン反応検査が廃止されたことから,実際的には上記の@が適用の大半を占めると考えられ,これを実際的な状況に合わせて記述すると以下のようになる。
1.1 接触者健診
 結核の感染源に曝露された者に対する接触者検査の一部として行われ,感染の有無の確率を評価する1)。従来は一般人口において未感染者が多い若年者を中心に対象としてきた。大多数がBCG既接種者であるため,ツベルクリン反応検査は既往のBCG接種の影響を免れない。曝露の時期とツベルクリン反応検査の実施時期が接近している場合には一定期間の後,再度検査をする必要があるが,このときBCG既接種者ではブースター現象によりさらに強い反応が出る可能性がある。これらの検査の結果,感染の確率の判定に応じて,精密検査,化学予防が指示される。
1.2 医療関係者の結核管理
 結核感染曝露の機会のある医療職員等には雇い入れ時,および曝露時に感染の有無を点検する必要がある。雇い入れ時のツベルクリン反応検査では原則として二段階検査が推奨されている2)。過去のBCG接種等の影響については共通の問題があり,二段階検査はそのための一つの対応策である。すなわち,二段階検査によって各個人の「ベースライン・ツベルクリン反応」を記録しておき,感染曝露時のツベルクリン反応との比較により感染の確率を評価するものである。雇い入れ時検査および曝露時検査による感染の確率の評価によっては,精密検査,化学予防が指示され,雇い入れ時にはBCG接種が指示されることがある。
1.3 結核発病リスクの評価
 結核に対する何らかの医学的リスク要因をもった者に対して化学予防の適応を決定するために,感染の確率の評価をおこなう3)。BCG接種既往の影響は共通に同じであるが,その他にこの場合はとくに免疫抑制要因(加齢,基礎疾患,特定の治療など)の影響を考慮しなければならない。
1.4 結核の補助診断
 臨床的に結核発病の可能性があるものの,菌所見などで診断が確定しない患者において結核感染の確率との関連で結核の診断を肯定,または否定するために行う。とくに陽性の菌所見の得られにくい小児結核,肺外結核などにおいては重要である。また結核と臨床所見が類似する疾患との鑑別にも有効なことがある。BCG接種の影響は他と共通の問題である。

2.ツベルクリン反応検査に影響する要因4,5)
 このような用途にツベルクリン反応検査を適用する上での,日本での最大の問題はBCG接種の既往である。ツベルクリン反応が結核感染によるものか,BCG接種によるものかの鑑別は非常に困難である。さらにそれに付随して,BCG接種の後ツベルクリン反応検査を受けるとそれによるツベルクリン反応の増強(ブースター現象)が起こり,いっそう解釈は困難になる。なお,BCG接種の影響と同様の問題が米国等では環境中非結核性抗酸菌感染の影響についても議論されており,わが国でも否定はできないがあまり調べられていない。
 BCG接種歴のほかに日本のツベルクリン反応検査の信頼性に影響する要因としては以下のようなものが挙げられる。ツベルクリン反応検査の実施および結果の解釈においてはこれらについても慎重な考慮が必要である。
2.1 技術的ばらつき
 PPD溶解液の調整,注射器への充てん(左は土,右が眞),注射(有効注射量,皮内の深さ),判定方法(計測部位の決定,物差しの当て方等)等々,ツベルクリン反応検査は注射と計測の技術(いわゆる術者のクセ)によって結果がかなり変わりうる。
2.2 PPDの力価
 PPDの貯蔵条件(抗原の変質,バイアルの密閉度等),溶解後の時間経過とくに注射器に吸い上げてからの時間経過(吸着現象)。
 なお日本の精製ツベルクリンは生物製剤基準によって,製品としては厳密に力価の管理が行われており,現在2種(個人用および集団用)が市販されている。使用にあたってはいずれも1回用量が0.05mcg/mLになるように調整される。ちなみに,この用量は国際標準ツベルクリンPPD-Sと比較すると,2.5TUに相当するとされる。
2.3 医学的・生物学的要因(BCG接種を除く)
 @ 注射部位:注射部位(前腕屈側,伸側,上腕下部など)および以前にツベルクリン反応検査に使用し,反応が生じた部位か否か(促進現象)等。
 A 免疫抑制性の病気:HIV感染/エイズ,慢性腎不全,ある種のウイルス感染(麻疹,風疹,水痘)とこれらの予防接種,サルコイドーシス,リンパ腫,悪液質,極度の低栄養
 B 重症あるいは急激に進展する時期の結核:重症結核,結核性胸膜炎
 C 免疫抑制剤の使用:副腎皮質ホルモン剤,TNFα阻害剤,その他の免疫抑制剤・制癌剤,放射線治療。
 D その他:年齢(新生児,高齢者),感染後の期間(アレルギー前期)
2.4 実験誤差
 同じ術者が同一人物に検査をしても結果が様々な程度に異なることがある。

3.ツベルクリン反応検査のパフォーマンスと「判定」の問題
 ツベルクリン反応検査を1で述べたように結核感染の診断に用いる場合には基本的に「陽性」「陰性」のような「判定」が用いられる。この場合,一般検査と同様,検査のパフォーマンスの基本的な指標は@感度,A特異度である。これらを実際の感染蔓延の条件に当てはめた場合における診断の有用性の指標が陽性的中率,陰性的中率である。
3.1 感度
 結核感染を受けた人における陽性率でみる。しかしこの「絶対基準」は実際的には存在しないので,通常は結核患者における陽性率が用いられる。これは従来の基準(発赤10mm以上)によると,一般成人患者では97.8%,このうち高齢者では90.6%(60歳以上,さらに高齢ほどより低くなる6))である。また小児では95.6%程度であり7,8),感度は比較的良好である。
 これに対して3.4で述べる陽性的中率を上げるために,より厳しいカットオフ(陽性基準),たとえば発赤30mm,発赤40mmをもちいると,一般成人患者の陽性率はそれぞれ55.5%,17.3%となる6)。つまり感度はそれだけ下がり,真の患者の見落としが多くなる。
 硬結を用いた場合,今利用できる知見としては注射後48時間の測定による成績しかないが,これによれば5mm以上98.5%,15mm以上67.7%,20mm以上20.9%6)となる。
3.2 特異度
 結核の感染を受けていない人における陰性率でみる。ここでも「絶対基準」はないので,通常は感染の可能性の低く,BCG接種を受けていない乳幼児における観察で代用する。これも年齢によってかなり異なり,0歳児99%,1歳児98%,2歳児96%,3歳児93%と言う成績がある9)。患者との接触のない未接種者に対して以前便宜的に設定した発赤30mmというカットオフを適用すると特異度は0歳児は99.7%となる9)
 なお,BCG既接種者においては,ツベルクリン反応検査の特異度は低く,その程度は対象集団が受けたBCG接種の技術差によるツベルクリンアレルギーの強さに依存する。ちなみに標準的な技術で接種が行われた乳幼児の接種後6カ月では,陰性率(特異度)は8.7%,接種後5年では30.5%10),また大学生#では7.6%11)等である。患者との接触のない既接種者に対して以前便宜的に設定した発赤40mmというカットオフを適用すると特異度はそれぞれ99.0%,100%,また大学生#では82.2% 11)となる。
 # BCG歴なし19%,接種歴不明24%を含む。もし厳密にBCG歴ありのみについてみればこの割合はより小さくなる。

3.3 陽性的中率と複数基準の設定
 上記のような感度,特異度の検査を実際の対象集団に適用した場合に,陽性と判定される人が真に感染を受けている確率である。これは検査方法に固有の上記2指標のほか,感染の蔓延程度に左右される。蔓延度が高ければこの指標値は上がるが,蔓延度が低ければ下がる。すなわち,この検査を適用する対象の結核感染の予想される確率によって変わり,例えば感染源に曝露されている集団では陽性的中率は高く,逆に一般の子どもたちのように既感染者が少なければこの的中率は低い。たとえば,上で見たように感度97.8%,特異度98%の判定基準を,既感染率20%の集団に適用した場合には陽性的中率は92%と良好であるが,既感染率が1%の集団に適用した場合にはわずか33%に下がってしまい,「陽性者」の大半が偽陽性という状況に陥る#。ここにそうした事前の感染率に応じた妥当な「判定基準」を適用する必要性がでて来る4,12)
 そのようないわば二重基準として用いられているのが,日本では濃厚曝露の疑われる場合のカットオフとして発赤10mm,それ以外での発赤30mmなど12),また米国ではそれぞれ5mm,15mmなど4)である。日本の後者の基準では,3.2の議論から知られるように検査対象に含まれる真の既感染者の55.5%しか検知できないことは,無用の偽陽性者を大量に作り出さない(つまり陽性的中率を確保する)ためにやむを得ないことである。
 #同様に例えば既感染率が0.1%,5%,10%,30%であれば,この判定基準での陽性的中率はそれぞれ5%,72%,84%,95%となる。

3.4 陰性的中率
 上の陽性的中率とは逆に,この検査で陰性とされたものの中での真に感染を受けていない確率である。検査技術の制度とは無関係に,対象者の予想される感染の確率が高い場合にはこの率は低くなり,低い場合にはこの率は上がる。
 上記のような議論から,ツベルクリン反応検査に限らず,いかなる診断方法にとっても普遍的な判定基準の設定は単純ではない。特殊な場合を除いて,判定基準はあくまでも便宜的・相対的なものと考えなければならない。この前提に立って最も「有用性が大きい」と考えられる判定基準が設定されるのである。
 同時にツベルクリン反応検査においては,2で見たようにBCG接種による非常に大きな影響をはじめ,多くの攪乱要因(バイアスおよび再現性の阻害要因)がある。
 このような条件下にあるツベルクリン反応検査の成績は,あくまでも被験者の結核感染の確率を評価する一つの根拠と考えるべきであり,ツベルクリン反応検査だけを機械的に適用して結核感染を否定したり,主張したりすることはできない。つまり,何らかの基準のみによる「陽性」例を既感染例と判断したり,「陰性」例を未感染例として扱うような用い方は避けなければならない。あくまで,感染曝露状況,年齢,発病リスクに関わる因子,周囲の接触者からの発病者・感染者の有無,BCG接種歴,接種技術等を確認し,その上でツベルクリン反応検査結果を加味して,総合的に考え判定しなければならない。

4.発赤と硬結の関係および測定時期
 ここまでの議論において判定方法についてはすべて従来の日本の検査方法である「注射後48時間の発赤長径の測定」に基づいてきた13)。硬結と発赤は一般にかなりよく相関する14)。このことから,真のツベルクリンアレルギーを代表するのは硬結のみである,というような議論は正しくない。日本では発赤をツベルクリン反応検査の指標として優先的に扱ってきたが,それには一定の合理性があったことは認められる。ただし冒頭にも述べたように,これは国際的な標準4,15)から逸脱しており,学問的,実践的な知識や経験の国際的な共有という観点から検討が必要とされてきたところである。
 この課題に対する当面の解決策として,以下の判定基準案では今後の反応評価の方法として発赤,硬結を測定する方式のいずれか一方によることとし,両者を併記した。そこで用いた発赤と硬結の規準値の対応は,高井・森の研究により「硬結≒0.50×発赤」という大まかな関係,およびパーセンタイル点のおおよその対応#から提案されたものである10)。もちろん発赤と硬結の対応は正確なものではないので,いずれかで陽性,他方で陰性といったケースも多いと考えられるが,ツベルクリン反応の変動幅を考慮して判断する。
 なお,小児結核患者(大阪府立呼吸器・アレルギ−医療センタ−小児科)における高松らの観察によれば,概ね「硬結≒0.39×発赤」という関係があるという。これからすると,発赤10mmは硬結4mmに,30mmは12mmに,40mmは16mmに対応することになる。つまり成人に比して小児では硬結は発赤の割に小さく測定される可能性がある。
 一方,発赤は測定しやすさに加えて別の利点もあるという議論がある。つまり発赤は硬結径に比べてツベルクリン反応が強い場合(結核発病者等において),硬結径では反応径が頭打ちになるが,発赤径では強い反応に応じて大きさが増大していくため反応の強さが評価しやすいという有利な点があるという。このため,集団感染時において発赤径分布ではニ峰性分布を見ることで集団感染が認識しやすいが,硬結径分布では観察されないという。このような点も考慮に値しよう。
 PPD注射後,反応の測定時期については,これまでの多くの観察では発赤も硬結もその平均値は48時間でピークに達し,その後96時間くらいまでは一定とされる。もちろん個人の値はこの48〜72時間で様々に変わることはあり得るが,平均値としてはこうなっている。このためWHOでは72時間で,日本のこれまでの標準では48時間で,また米国では48〜72時間で測定を行う。今回の基準では,原則として発赤については48時間,硬結については72時間で測定し,測定した時期を記録しておくこととした。なお,ツベルクリン反応の記載としてはいずれの時間の測定値もその診断的な価値は変わらない。
 #高井・森による結核患者における観察では,発赤10mm未満の者と硬結5mm未満のものはそれぞれ2.2%,1.5%であり,同様に発赤30mm,硬結15mmに対しては44.7%,32.3%,そして発赤40mm,硬結20mmについては82.7%,79.3%であった10)。またBCG既接種集団でも,発赤30mm,40mmと硬結15mm,20mmの対応関係についてはそれぞれのパーセンタイル値がほぼ一致するという観察もある14)

5.ツベルクリン反応検査実施の技術的基準
5.1 ツベルクリン反応判定方式の決定
 ツベルクリン反応の判定方式(発赤によるか,硬結によるか)を予め決定する。これによって測定時間も異なる。
5.2 注射部位
 所定の精製ツベルクリン溶液0.1ml を被験者の前腕屈側中央部に皮内注射する。繰り返して検査を行う場合には,以前に注射した部位を避けて行う。
5.3 測定時間
 原則として発赤による判定方式では注射後およそ48時間,硬結による判定方式では同じく72時間後に注射部位の反応を測定する。ただし何らかの事情でそれぞれ72時間,48時間に測定されたものであっても診断上の価値はあまり変わらない。平均的にみれば48時間と72時間の間には明瞭な差はないとされるが,個別的には前後で様々に違った反応が出る可能性がある。また発赤,硬結いずれの判定方式によるにせよ,参考所見としてその両者を測定し,記録しておくことが望ましい。
5.4 測定方法
 注射部位に生じた発赤および硬結について,その大きさを測定する。
 発赤は最大径を測定する。硬結は腕の軸方向に直交する方向の径(横径)を測定する(国際的な基準にあわせるため)。測定にはプラスチック製の物差しを用い,mm単位で記載する。反応の大きさのほかに,リンパ管炎,水疱,出血,壊死等のいわゆる副反応についてもその有無を記載する。なお,二重発赤を伴う反応において,測定の対象となる発赤径は外側の発赤に関するものである。
5.5 結果の記載
 様式は特に定めないが,例えば以下のようなものが便利であろう。

ツベルクリン反応検査成績( 月 日注射, 月 日測定) 

 発赤      mm   硬結     mm

副反応 二重発赤,リンパ管炎,水疱,出血,壊死

 (該当するものを○で囲む)
5.6 結果の解釈
 便宜的に「陽性」「陰性」という「判定」区分を用いるが,まず反応の大きさ等を量的に記載することを基本とする。その上で検査結果の利用目的に応じて以下の基準を参考にして解釈をする。ここには発赤,硬結のいずれについても基準を示すが,使用にあたっては測定者自身が測定結果についてより信頼性があると考えるいずれか一方を用いることとする。
 またツベルクリン反応に影響を及ぼす様々な要因,とくに技術的変動,繰り返しツベルクリン反応検査,年齢その他の影響についても十分配慮する必要がある。
@ツベルクリン反応検査の結果に基づく措置のための基準
 以下の基準に該当する場合には「有意の反応」と判定する。ここで「有意の反応」というのは「結核感染が考えられる」,または「結核感染の可能性が有意に大きい」ことを意味する,あくまでも便宜的な表現であり,これが用いられるのは,化学予防の適応決定,臨床における結核診断の支持・精密検査の適応決定などにおいてである。なお,小児とくに乳幼児においてはこれよりも小さい値を基準として用いることが有用である。

  接触歴*
なし あり
BCG
接種歴
なし 硬結15mm以上
または
発赤30mm以上
硬結 5mm以上
または
発赤10mm以上
あり 硬結20mm以上
または
発赤40mm以上
硬結15mm以上
または
発赤30mm以上

*原則として喀痰塗抹陽性患者との接触とする。ただしそれ以外でも感染性と考えられる患者との接触を含む。

A量的な反応の評価
 BCG接種の技術評価や細胞免疫の評価などにツベルクリン反応検査を行う場合には,もっぱら反応の大きさを指標として用いることとし,「陽性」「陰性」のような定性的な判定は用いない。

6.今後の課題
 日本においてもツベルクリン反応検査の技術基準は国際的な基準である注射後72時間に硬結横径を測定するという方式に統一されることが望ましいと考えられるが,そのために日本の精製ツベルクリンを用いた,日本の環境での硬結によるツベルクリン反応の基礎的な観察(反応の経過,発赤との関連,医学的な要因との関連,とくに感染曝露者における硬結径とその後の結核発病率など)の研究,および本学会国際交流委員会が行ってきたような硬結測定の考え方とその技術の普及(そのための技術研修の推進16),がさらに積極的に行われることが望まれる。
 さらに,この暫定基準による実践の経験をもふまえて,近い将来よりよい基準が確立されるよう,本委員会は引き続き検討を続けていくことにする。
 ツベルクリン反応検査に代わる結核感染診断の検査技術としてクォンティフェロン第二世代17)が注目されている。この検査はツベルクリン反応検査と比してBCG接種の影響を受けない,ブースター現象を起こさない,検査技術のばらつきが小さい等の点で優れた方法である。近い将来ツベルクリン反応検査は多くの適用の上でこの種の検査に置き換えられていくであろう。しかしこの技術にも現在のところ検査実施施設の制限をはじめ,小児における実施の困難性,臨床/疫学的な証拠の不十分さなど,急速な普及を妨げる要因がいくつかある。同時に,結核予防法改定によりBCG接種の機会が少なくなり,これまでツベルクリン反応検査の価値を制限してきたBCG接種アレルギーの影響が小さくなることも考えられるので,それにつれてツベルクリン反応検査の価値も向上する。このようなことから適正なツベルクリン反応検査の一定の重要性は依然として残ることも忘れてはならない。

[文 献]
1) 森 亨(監修):保健所における結核対策強化の手引き.結核予防会, 2002.
2) 日本結核病学会予防委員会:医療関係者の結核予防対策について.結核.1993; 68: 731-733.
3) 日本結核病学会予防委員会, 有限責任中間法人日本リウマチ学会(共同声明):さらに積極的な化学予防の実施について.結核. 2004; 79: 747-748.
4) American Thoracic Society / Centers for Disease Control and Prevention: Targeted Tuberculin Testing and Treatment of Latent Tuberculosis Infection. Am J Respir Crit Care Med. 2000; 161(4, Part2): S221-S247.
5) 森 亨:ツベルクリン反応検査.結核予防会, 1995.
6) 高井鐐二, 森 亨:最近のツベルクリン反応検査の諸問題:結核と呼吸器疾患文献の抄録速報.1975; 26: 323-325.
7) 高松勇, 豊島協一郎:小児結核.呼吸器疾患・結核資料と展望. 1994; 8: 24-37.
8) 雉本忠市, 黒川博, 川崎一輝, 他:小児結核患者のツベルクリン反応の大きさ.INH予防内服新基準に関連して.日本小児呼吸器疾患学会雑誌. 1991; 2: 22-25.
9) 結核予防会沖縄県支部資料(1985年度).
10) 高井鐐二, 森 亨:未発表資料.
11) 野城孝夫, 佐藤研, 佐藤博, 他:青年期におけるツベルクリン反応の実態.−平成10年度東北大学全学結核検診報告.結核. 2000; 75: 363-368.
12) 厚生省保健医療局疾病対策課結核・感染症対策室長通知:初感染結核に対するINHの投与について.健医感発第20号.平成元年2月28日.
13) 結核予防法施行規則第2条(2005年廃止).
14) Kimura M, Comstock GW, Mori T: Comparison of erythema and induration as results of tuberculin tests. Int J Tuberc Lung Dis. 2005; 9: 853-857.
15) Deck F, Guld J: The WHO Standard tuberculin test. Bull Int Union against Tuberc. 1964; 34: 53-70.
16) 日本結核病学会国際交流委員会活動報告.2005年.
17) Mazurek GH, LoBue P, Iademarco MF, et al. : Guidelines for using the QuantiFERON(R)-TB Gold Test for detecting Mycobacterium tuberculosis infection, United States. MMWR. 2005; 54 (RR15): 49-55.


日本結核病学会予防委員会
委員長 鈴木 公典   
副委員長 高松  勇
委員 片岡 賢治 佐藤 牧人 長谷川直樹 吉山  崇
辻    博 藤岡 正信 沖本 二郎 渡辺憲太朗
委員長推薦委員 森    亨

(出典:結核.Vol.81, No.5: 387-391. 2006)

この報告を個人的な利用に限りダウンロードあるいはコピーをして使っても構いませんが,複数部コピーして配布するような場合には,日本結核病学会の許可を得て下さい。
日本結核病学会事務局
osada@jata.or.jp