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2.RFPまたはINHが投与できない場合の治療法
RFPとINHは現代の結核治療において最も強力な不可欠の薬剤であるが, 菌の耐性化や副作用などのためにこれらの薬剤が投与できない場合には体内の生菌を可及的に撲滅するという所期の治療目標の達成はより難しくなる。このため,
体内の生菌数が最も多いと考えられる治療当初は結核菌に有効とされるフルオロキノロン薬7)8)を含めた感受性のある他の抗結核薬を4剤以上併用して治療することが望まれる。
以下の例示を参考にして, 有効な治療薬を複数選択し, 多剤併用療法により治療する。ただし, 例示した治療薬の一部が投与できない場合には,
表の優先順位に従ってsecond-line drugs 2)(表のKM以下の薬剤)またはフルオロキノロン薬(レボフロキサシンなど)から感受性のある薬剤を順次選択し,
変更する。ただし, わが国ではフルオロキノロン薬は抗結核薬としては未承認であるため, 抗結核薬として使用する場合は, この点を留意する必要がある。因みに抗結核薬があまりにも少ない現状を鑑み,
フルオロキノロン薬が速やかに抗結核薬として承認されることを要望する。
なお, 治療期間は標準治療法に準じて, 粟粒結核や病型分類Tなどの重症例, 治療開始3ヵ月後も持続する培養陽性例, 糖尿病や塵肺合併例,
全身的な副腎皮質ステロイド薬・免疫抑制剤の併用例, などはさらに3〜6ヵ月間延長してもよい。
(1)RFPが投与できない場合の治療法(INH感受性でINH投与可の場合)
@PZAが投与可能な場合
INH・PZA・SM・EB(・レボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤)の4〜5剤で菌陰性化6ヵ月まで治療し,
その後INH・EB(・レボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-lineの1剤)の2〜3剤で治療する。治療期間は菌陰性化後18ヵ月間とする。
ただし, SMの投与は最大6ヵ月間とする。
APZAが投与できない場合
INH・SM・EBにレボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤を加えた4剤で菌陰性化6ヵ月まで継続治療し,
その後INH・EB・second-line drugの3剤で治療する。治療期間は菌陰性化後18〜24ヵ月間とする。ただし,
SMの投与は最大6カ月間とする。
(2)INHが投与できない場合の治療法(RFP感受性でRFP投与可の場合)
@PZAが投与可能な場合
RFP・PZA・SM・EB(・レボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤)の4〜5剤で菌陰性化6ヵ月まで継続治療し,
その後RFP・EBの2剤で治療する。治療期間は9ヵ月間, または, 菌陰性化後6ヵ月間のいずれか長い期間とする。ただし,
SMの投与は最大6ヵ月間とする。
APZAが投与できない場合
RFP・SM・EB・レボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤の4剤で菌陰性化6ヵ月まで継続治療し,
その後RFP・EBの2剤で治療する。治療期間は12ヵ月, または, 菌陰性化後9ヵ月のいずれか長い期間とする。ただし, SMの投与は最大6ヵ月間とする。
3.RFPおよびINHが投与不可の場合の治療法(多剤耐性結核症の治療)
RFPおよびINHの両薬剤が耐性あるいは副作用のため投与できない場合は以下の原則を踏まえて治療する。なお, 多剤耐性結核患者は多剤耐性患者用病室を備え,
DOTを実施し, 外科治療も可能な専門的医療機関で治療すべきである。また, 医療チ−ムは副作用の発現に細心の注意を払うと共に,
治療期間が長期に及ぶこと, 治療の成功率が必ずしも高くないこと, 治療薬剤の副作用やその早期発見方法, 治療後の排菌の推移,
などについて患者およびその家族に繰り返し説明し, 治療が完了できるように保健所などとも協力して, バックアップすることが大切である。
治療の原則
(1)治療当初は投与可能な感受性のある薬剤を最低でも3剤(可能なら4〜5剤)を菌陰性化後6ヵ月間投与し, その後は長期投与が困難な薬剤を除き,
さらに菌陰性化後24ヵ月間治療を継続する9)。
(2)結核菌の薬剤耐性化は遺伝子の点突然変異によるため, 菌は薬剤に対し一定の確率で耐性化する。このため, 感受性のある一剤のみの変更は容易にその薬剤の耐性獲得に帰結するため禁忌であり,
治療薬を変更する場合は一挙に複数の有効薬剤に変更する。
(3)薬剤の選択は別表の記載順に従って行う。ただし, SM, KM, EVMは同時併用はできない。抗菌力や交差耐性を考慮し,
SM→KM→EVMの順に選択する。また, フルオロキノロンも同時併用はできない。抗菌力や副作用等から, レボフロキサシン→シプロフロキサシン→スパルフロキサシンの順に選択する。
(4)外科治療が可能な患者では治療当初から外科療法を積極的に考慮する。なお, 外科治療の成功のためにも, いくつかの有効な抗結核薬が不可欠である9)10)。
(5)多剤耐性のうち, INH 0.2μg/ml耐性, 1μg/ml感受性の場合はINHを投与してもよいが, 有効薬剤には数えない。
[文献]
1)厚生省保健医療局エイズ結核感染症課監修:結核医療の基準とその解説. 財団法人結核予防会, 東京, 1996.
2)日本結核病学会治療委員会:「結核医療の基準」の見直し.結核.2002;77:537-538.
3)和田雅子:抗結核薬の副作用とその対策.日本臨床.1998;56:3091-3095.
4)Heifets LB:Antimycobacterial Drugs. Semin Resp Infect.1994;9:88-103.
5)American Thoracic Society:Treatment of Tburculosis and Tuberculous
Infection in Adults and Children. Am J Respir Crit Care Med.1994;149:1359-1374.
6)日本結核病学会治療委員会:肝, 腎障害時の抗結核薬の使用についての見解.結核.1986;61:53.
7)Tomioka H:Prospects for development of new antimycobacterial
drugs. J Infect Chemother.2000;6:8-20.
8)Berning SE:The Role of Fluoroquinolones in Tuberculosis Therapy.
Drugs.2001;61:9-18.
9)中島由槻:多剤耐性結核の治療.結核.2002;77:805-813.
10)Pomerantz BJ, Cleveland JC, Olson HK,et al.:Pulmonary resection
for multi-drug resistant tuberculosis. J Thorac Cardiovasc Surg.2001;121:448-453. |