ピラジナミド感受性試験法の提案

                                                   平成12年8月

抗酸菌検査法検討委員会

  
ピラジナミド(PZA)は主要な抗結核薬の1つであり,半休止期の結核菌に殺菌的に働く薬剤である1)。わが国では世界各国から 数年遅れた1996年にPZAを含む6カ月の短期化学療法が標準治療法に加えられた2)。近年PZA耐性菌の出現が報告されているが,かかる場合は治療期間をさらに3〜6カ月延長する必要がある。従って, PZAに感受性であるか否かを知ることは適切な治療のために重要である。PZAの最小発育阻止濃度(MIC)は測定に用いる培地のpHにより大きく左右されることもあって, これまで標準となる感受性試験法は確立されていなかった。

 治療により出現したPZA耐性結核菌はピラジナミダーゼ(PZase)活性を欠くこと,また通常PZase活性の消失とPZA耐性発現の間に相関が見られることが 明らかになった3)〜6)。PZaseの役割は,細菌細胞内でPZAを殺菌活性を持つピラジン酸(pyrazinoic acid)に変えることにあり,PZA耐性結核菌やMycobacterium bovis (subtype bovis)はPZase活性を欠くためPZAに耐性を示すと考えられている。日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会では,PZA感受性の判定法としてピラジナミダーゼ試験の導入を考え,Wayneの方法を用いて検討を重ねてきた7)8)。その結果本法は再現性に優れていることが分かり,委員会ではPZA感受性試験法としてWayneにより開発されたピラジナミダーゼ試験を提案することにした。ただし,この試験の感度はあまり高くないこと,結核菌集団の中に占める耐性菌の役割を知ることができないなどの不充分な点もあることから,今後より優れた試験法が開発された場合にはなお検討の余地がある。

1.試験培地
 ミドルブルック7H11寒天培地粉末1.9g(BBL)または2.1g(Difco)にグリセリン0.5ml加蒸留水100mlを加え,加熱溶解する。これにピラジナミド10mgとピルビン酸ナトリウム200mgを加え混和溶解後,スクリューキャップ付小試験管(16×125mm)に5mlずつ分注,キャップを緩め121℃で15分間高圧蒸気滅菌する。滅菌後キャップを締め,試験管立てに立て,固まらせる(斜面にしない)。4℃に保存したとき6カ月間使用可能である。

2.試験法
 固形培地培養のできるだけ若い培養菌(2〜3週)を接種菌として用いる。大量の菌(山盛り1〜2白金耳量)を試験培地の表面に広げて接種し,37℃で培養する。培養4日目に使用直前に調整した1%硫酸鉄(U)アンモニウム溶液を1ml加え,室温に30分間放置,寒天表面に現れるピンクないし茶褐色のバンドを観察する。バンドがみられない陰性試験管は4℃に4時間放置後に再度判定する。色調は室内灯落下光線のもとで後ろに白色の紙などを置いて観察すると検出が容易である。

3.結果の判定
 寒天培地表層にピンクないし褐色のバンドが見られた場合を陽性,見られない場合を陰性と判定する。また陽性か陰性かの判定が困難な例は±と判定し,その場合は再試験する。

4.PZA感受性の判定と記録
 ピラジナミダーゼ試験陽性例はPZA感受性,陰性例はPZA耐性とする。

留意点
@試験培地へのOADC添加の有無は結果に影響しない。
A菌接種前に寒天培地の表面に滅菌蒸留水を1滴(50〜100μl )滴下することにより菌接種が容易に行える。
B判定し難い場合は4℃に保存し翌日判定する。陽性試験管では前日表面に検出された着色が培地の中に拡散して見える。
C鑑別・同定の目的で使用する場合,培養4日目の成績が陰性の場合は培養7日目に判定することになっているが,この試験の目的は感受性を知ることであり培養4日目に判定する。

[文献]
1)Heifets L, Lindholm-Levy P:Pyrazinamide sterilizing activity in vitro against semidormant Mycobacterium tuberculosis bacterial populations. Am Rev Respir Dis. 1992;145:1223-1225.
2)厚生省保健医療局エイズ結核感染症課:結核医療の基準とその解説,結核予防会,東京,1996.
3)Konno K, Feldmann FM, McDermott W:Pyrazinamide susceptibility and amidase activity of tubercle bacilli. Am Rev Respir Dis. 1967;95:461-469.
4)McClatchy JK, Tsang AY, Cernich MS:Use of pyrazinamidase activity in Mycobacterium tuberculosis as a rapid method for determination of pyrazinamide susceptibility. Antimicrob Agents Chemother. 1981;20:556-557.
5)Trivedi SS, Desai SG:Pyrazinamidase activity of Mycobacterium tuberculosis - a test of sensitivity to pyrazinamide. Tubercle. 1987;68:221-224.
6)Butler WR, Kilburn JO:Susceptibility of Mycobacterium tuberculosis to pyrazinamide and its relationship to pyrazinamide activity. Antimicrob Agents Chemother. 1983;24:600-601.
7)Wayne LG:Simple pyrazinamidase and urease tests for routine identification of mycobacteria. Am Rev Respir Dis. 1974;109:147-151.
8)日本結核病学会抗酸菌検査法検討委員会:新結核菌検査指針,結核予防会,東京,2000.

抗酸菌検査法検討委員会
委員長   阿部千代治
副委員長 河原 伸
委 員    飯沼由嗣,一山 智,大泉耕太郎
        尾形英雄,鎌田有珠,古賀宏延
        斎藤 肇,鈴木克洋,本田芳宏
        森  亨,矢守貞昭,和田光一

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